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小説『番狂わせ 警視庁警備部特殊車輛二課』

そろそろ押井さんの小説の感想をば

この小説、警視庁警備部特殊車輌二課(通称 特車二課)と銘打っていますが、パトレイバーという言葉は殆どでてきません。

したがって、この小説はパトレイバーであってパトレイバーではありません。 
あえて言えばもう一つのパトレイバーであり、過去のシリーズとはパラレルな時系列を辿った話で、世界観は現実世界とほぼ同じですが一応11年前にレイバーという、人が搭乗する二足歩行の大型ロボットが開発され、自衛隊や警察が部隊を創設されるまでに至ったが、結局世間一般に普及せず、自衛隊は早々と部隊を解散、警察は警備部の特車二課に2小隊あったのが第二小隊を残すのみといった具合に廃れています。 
ただ、その間に首都・東京でクーデター事件が勃発し、その解決にかつての第二小隊員を中心とした特車二課が関与したという歴史はあります。

過去のシリーズを好きだったままの頭でこの小説を読まれた方の中にはこの設定が許しがたいようですが、元々この小説が執筆されるきっかけとなったのは、ほぼ現実世界と同じ警察組織を描いた今野敏氏による小説安積班シリーズの一篇『夕爆雨 東京湾臨海署安積班』に特車二課後藤隊長が登場したからで、そのアンサーとしてこの小説は執筆されるわけですが、ほぼ現実世界に近い警察組織の警察官である安積刑事を登場させるには世間一般にロボットがガチャガチャと動き回っていて、たまに犯罪なんかが起こる世界である訳にはいきません。
更に云えば、パトレイバーファンなら ――この作品はフィクションである… しかし、10年後にはさだかではない―― というコピーを見たことがあると思います。
10年後… そう、パトレイバーという作品はぱっと見こそ現代を描いているように見えていますが、基本未来を舞台としており、それが一応のレイバーが存在する言い訳となっていました。
翻って、この小説は未来ではなく現代を舞台としております。
現代はといえば漫画やアニメで描かれた未来に比べて予想以上に発展・進歩した分野が多々ありますが、未だ人を搭乗させる2足歩行大型ロボットは登場しておりません。
そうしたかつての未来だったこの現代でパトレイバーをやる…
そのあたりの事情を考えて貰えば納得はできないかもしれませんが、多少は理解していただけるでしょう。

もっとも、押井さんといえばかつて、『うる星やつら』のラムが宇宙人なんかではなく詐欺師だったら? というコンセプトで『御先祖様万々歳!』という作品を作ったこともあり、パトレイバーという作品の設定にも異論が多々あったようですから単にこういうのを本当はやりたかったということも否定できません。

しかし、一方で過去のシリーズのファンとしてこの小説を読んだとしてもそれほど捨てたものでもありません。
なんだかんだ言ってかつての特車二課の面々に対しては敬意がはらわれていますし、そもそもレイバーが廃れたのに何故特車二課、わけてもあの第二小隊が存続しつづけているかといえば、東京でのクーデター事件の後、警察上層部の弱みを握っている後藤隊長が暗躍していたからで、そのあたりもっと喜んでもらってもいいのではないかと思います。 というか、私はむしろ泣けてきました。
あと小ネタとして特車二課の昼食の出前を一手に引き受ける中華食堂・上海亭が登場しますが、そこの亭主は特車二課になにやら借りがあるということで、アニメ版を観たことがある人には「ああ、特車二課を壊滅に追い込んだ忌まわしきあの事件のことかしら?」 とニヤリとさせられます。
そのあたりから、パトレイバーという作品に対しての押井さんの感情は複雑ではありますが、否定しているものではないことが判ります。

この小説、登場人物といえばかつての特車二課の面々で唯一残っているのは整備班長のシバ・シゲオシゲさん)だけ、あとは後藤隊長の後輩で第二小隊2代目隊長・後藤田、3代目レイバー隊員で一応主人公である泉野 明(男)、大田原神酒屋、紅一点の香貫子

それぞれ、かつての特車二課の面々に似た語感の名前や性格でどうしても、頭の中で大林隆介古川登志夫池水通洋二又一成井上瑤といった声優の声で読んでしまいます。
そのあたり下手に挿絵が無い小説がだからなせることであり、基本的に別人でありながらアニメのキャラクターを連想させるよう旨く読者を誘導させています。

しかし、これは私の妄想なのですが果たして本当に別人なのか?という疑問。
特に後藤田に関しては 後藤隊長の後輩というにはあまりのもそのまますぎますし、もしかしたらシャア・アズナブル≒クワトロ・バジーナ的に後藤隊長が偽名を使って(実際に後藤隊長後藤田という偽名を使ったことがあります)、第二小隊の隊長として居座り続けているのではないか? シゲさんも色々事情を知っていながら黙して語らない様子から何やら匂ってきます。

はたまた、妄想を大飛躍させてこの小説には『スカイ・クロラ』(※ 原作・森博嗣)の設定が入っていて実はかつてのレイバー隊員達が転生して特車二課に戻ってきているとか? そういえば、原作の『スカイ・クロラ』の整備士ササクラはなんとなくシゲさんとかぶるしな~とか…
さすがに妄想が過ぎますが…

最後にこの小説の大部分を占める、サッカーの薀蓄ですが本当に濃いサッカーマニアからすれば浅かったり、偏った考えがもしかしたらあるかもしれませんが、押井さんは今日本で冷静にサッカーを見ている数少ない人の1人だと思います。 また小説でこのような視点でサッカーを語る人は殆どいないでしょう。
私自身はサッカーについて全く素人ですが、このサッカーの薀蓄から押井さんの考える国防への考えや、自身がやろうとしている映画のあり方までもが読み取れた気がして面白かったです。
とりあえず、今のサッカー日本代表監督ザッケローニがイタリアサッカーを変えたほどの偉い監督だということも判って良かったです。


この小説、恐らく映像化は難しいと思います。
ただ、クライマックスのサッカー競技場のあたりは色んな意味で観てみたいと思いました。


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テーマ : 文学・小説
ジャンル : 小説・文学

tag : 押井守 パトレイバー 番狂わせ_警視庁警備部特殊車輌二課

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